ファイルメーカーProによる
MML準拠「診療情報提供書」の運用

 

三谷正信 1,6),大柳俊夫2,6)
片山吏司 3,6),宮本 宏 4),工藤克美5,6)
札幌医科大学医学部1),同保健医療学部2),片山内科胃腸科医院3),江別市立病院4)
匠ディジタル工房5),医療とマルチメディア研究会6)


1.はじめに

我々は,北海道の地域医療における医療機関連携のあり方を検討し,種々のプロジェクトを計画実践してきた.今回,地域医療機関相互の患者紹介・逆紹介時の診療情報を有効利用するために,電子的媒体を介しての情報交換とその情報の共有化のシステムを考案し,平成12年3月より,北海道江別医師会においてMML(Medical Markup Language)を用いた診療情報提供書の運用を開始したのでその結果を報告する.

 

2.システムの概要と運用

1)参加医療機関

今回のプロジェクトに参加を表明している医療機関は江別医師会に所属している三ヶ所の病院(うち総合病院一ヶ所)と,五カ所の診療所の計八カ所の医療機関である.それらの医療機関のうち,交換する医療情報を常時電子的に保存している医療機関は二ヶ所で,他の医療機関は今回新たに電子的な診療情報を作成保存するためのシステムの導入を検討している.従って,今回の「診療情報提供書」の交換は,現時点では全てがいわゆる病院情報システム間の情報交換ではなく,一部の医療機関では書面で記載されるべき内容を必要に応じて電子ファイルとして作成し,そのファイルの交換となっている.

2)運用形態

(i)診療情報提供書(様式6)の形式に必要な情報の入力インターフェイスは市販のアプリケーションソフトウェアであるファイルメーカーPro ver.4.1 (FileMaker, Inc.)を使用した(図1).紹介に必要な画像等は外部参照ファイルとして管理した.今回外部参照ファイルとしての画像の管理するためにJava版のイメージビュアーも同時に開発した.

(ii)入力された情報は,MML変換モジュールによりXMLファイルとして出力され,ファイルの受け渡しについては,可搬型電子媒体(FDまたはMO)か,専用公衆電話回線(INS64)による相手先医療機関への転送かを選択可能とした.公衆電話回線の利用可能な施設では,テレビ電話による情報交換も可能とした.

(iii)受け取った情報は2つの方法で内容の確認を可能とした.一つの方法はMML変換モジュールを介しXMLファイルをファイルメーカーProに取り込むことにより内容を確認し,同時にそれらをデータベースとして活用可能とした.もう一つは,病院情報システム内にデータを格納する際に,診療情報提供書の内容を確認するための専用ビュアーを開発し、それにより内容の確認を可能とした.

3)実行環境

MML変換モジュールに関しては,基本動作環境はWindows NT/2000で,今回開発した2つのプラグインと2つの外部プログラムおよび IBM AlphaWorks XML ライブラリィ( xml4c version 3.1.0)からなっている.MML専用ビュアーに関しては,Java環境(JDK 1.2)で動作し,XMLパーサーとしてxml4j2.0.1.5を,XSLプロセッサーとしてXT Version 19991105を使用した.

 

3.結果および考察

現時点で実運用されているのは二ヶ所の医療機関で,公衆電話回線(INS64)によるファイル転送により情報交換しているが,運用上の問題は発生していない.現段階で外部参照ファイルとして扱っているのは大部分が消化器内視鏡画像,超音波画像であるが,一方の医療機関のモダリティーが非DICOM対応なため画像フォーマットはJPEGファイルとして扱い,受け取った施設側で必要に応じてDICOM変換することとした.DICOM変換に関しては我々がフリーソフトウェアとして公開しているM3ICを使用することとした.検査データは現在はテキストデータとして扱っているが,各医療機関での管理の状況に応じてHL7等の共通フォーマットへの対応が必要と考えている.

MMLとしての問題点は,医療保険制度で決められている診療情報提供書(様式6)の項目に,MML規格書version2.21では対応できない項目があることである.今回我々は,紹介先医療機関に関する項目についてDTDにて宣言した上で独自に対応したが,今後検討すべき課題であると考えた.

4.おわりに

今回開発したファイルメーカーPro用MML変換モジュール一式(プラグイン,外部アプリケーション等)および,Java版MMLビュアーは,一部のソースコードを含め無料で配布する予定である.熱意のある方々の手によってより有用なツールに生まれ変わることを願う次第である.