経済産業省による四国4県
電子カルテネットワーク連携プロジェクト

 

原 量宏1)、近藤 博史2)、石原謙3)、瀬戸山元一4)
1)香川医科大学附属病院医療情報部、2)徳島大学医学部附属病院医療情報部、
3)愛媛大学医学部附属病院医療情報部、4)高知県・高知市病院組合


はじめに

平成12年度に経済産業省の予算による「診療所用電子カルテの開発」事業において、安価で使い易く、かつ診療所に十分な機能を有する診療所用電子カルテを開発し、香川県および中国・近畿地方を中心に機能検証を実施してきた。この事業では、データセンタとの通信プロトコルとしてMEDIS「電子保存された診療録情報の交換のためのデータ項目セット、JMICS」のドラフトに沿ってXMLベースの標準通信方式を開発し、複数の電子カルテ間でのデータ交換の検証を行った。この様な背景のもと、四国地域では、昨年度の成果を実フィールドへ適用・展開することを含め、地域ごとの医療圏(1〜3次)レベルでの病診連携等の充実とともに、県域を超えた医療機関連携を可能にすることを含め、四国4県電子カルテネットワーク連携プロジェクトをスタートさせる予定となっている。

 

1. 四国4県電子カルテネットワーク構築の目的・目標

1)地域医療圏(1〜3次)の病診連携システムの支援手段としての電子カルテ活用システムを分担開発し、医療現場の実診療により実証する。

(1)地域診療所間、診療所-中核院間等の地域医療機関相互で診療情報の共有を可能にする電子カルテを保存・提供するメディカル・データセンタのモデルシステムの開発並びに実証試験を行う。(各県)

(2)ICカード等を使用した共通診察券やメディカル・データセンタ等の活用による医療機関の電子カルテ連携で、かかりつけ医・総合病院の併診制度を推進する。(高齢者在宅介護に係る併診システム、小児在宅医療サポート、在宅酸素療法、リハビリテーション支援に関する病診連携等)(高知、愛媛)

(3)医師の専門性(肺ガンデジタル検診との連携、周産期医療等)に着目して診療科に対応した連携機能を開発する。(愛媛、香川)

(4)入力方式等のインタフェースの開発により、電子カルテの使い勝手の改善を図る。(徳島)

(5)既存の医療情報システムやレセプトコンピュータ、画像検査や臨床検査のデータ交換システムとの連携を図るため、デファクトや標準に準拠した汎用インタフェースを開発する。(香川、共同)

(6)情報スーパーハイウェイ、CATV回線等の既存通信手段を医療情報ネットワークとして活用するための、セキュリティ確保その他の技術を開発する。(愛媛、共同)

(7)電子カルテシステムを前提とした、インターネットによる患者からの医療相談に答えるシステムを開発する。今後の調整が必要であるが、主治医の同意の上でのセカンドオピニオンを求めるシステムの開発を目指す。(徳島、愛媛)

 

2)四国4県が共同して、県域を越えた広域医療情報共有システム並びに電子カルテネットワークを構築することにより、各地域の医療資源を有効に活用した4県連合の高度医療、大災害時医療提供のためのモデルシステムを構築する。

(1)県域を越えた患者移動を伴う高度医療及び大災害時医療についての電子カルテによる情報移動の基本システムを開発し、ガイドライン化する。これについては、高度医療、大災害時医療について、医療機関が関わった訓練として、模擬的に実証する。(共同)

(2)県域を越えた高度医療のコンサルテーションについての電子カルテによる情報移動の基本システムを開発し、ガイドライン化する。これについては、医療現場の実診療により、実証する。(共同)

 

3)医療情報の二次利用が効率よく行える二次利用機能のモデルシステムの開発並びに実証試験を行う。

(1) 患者及び医療機関の同意を得て、匿名化された医療情報を、電子カルテシステムを通じて4県から収集、解析(クリニカルパスを評価するプログラム)、評価するモデルシステムを開発し、EBMの推進に資する。(共同)

各県毎の主な開発内容

電子カルテ

レセコン

連動

その他

4県共通

・データ管理・システム運用機能
・検査連携(オーダ・参照システム)
・二次利用機能(情報収集機能)

徳島県

・テンプレート支援簡易入力方式
・簡易電子カルテ

・ CLAIM

・検査連携(オーダ・参照I/F) 機能
・PACS連携機能

香川県

・ 昨年度事業拡張(電子カルテ製作)

・ CLAIM

・検査連携(オーダ・参照I/F) 機能
・周産期医療データ連携機能
・在宅医療データ連携機能

愛媛県

・ORCA拡張
・各科向けインタフェース

・ CLAIM

・検査連携(オーダ・参照I/F) 機能
・肺がんデジタル検診機能
・CTG監視装置機能
・生体情報連動機能

高知県

・テンプレート機能
・シェーマ機能
・インフォームドコンセント機能

・検査連携(オーダ・参照I/F) 機能

2.システムの説明

(1)システム構成 全体概要


(クリックにて拡大 44K)

 

HIS: Hospital Information System

CA : Certification Authority

AA : Attribute Authority

PACS : Picture Archiving and Communication System

F/W : Fire Wall

DB : Data Base

VPN : Virtual Private Network

JGN : Japan Gigabit Network

通信・放送機構のギガビットネットワーク

STNet:(株)四国情報通信ネットワーク

 

 

 

徳島県システム概要図


(クリックにて拡大 32K)

 

 

香川県システム概要図


(クリックにて拡大 36K)

愛媛県システム概要図


(クリックにて拡大 40K)

 

高知県システム概要図


(クリックにて拡大 36K)

 

(2)ソフトウェア構成

電子カルテ機能には、各県毎のヒューマンインタフェース、各診療科ごとの開発を含む。

 

3.開発・運用の推進体制

実施委員会の体制四国経済産業局をオブザーバーとして各県3名(大学、医師会、自治体)の代表で開発・実証実験の実施委員会を主催し、実施委員会の主導の下に開発、実証実験、検証・ガイドライン策定を実施する。 

(実施委員会構成)

(ワーキンググループ)

広域医療WG     瀬戸山元一 高知県・高知市病院組合理事(委員長)

データ二次利用WG  石原 謙  愛媛大学医学部教授    (委員長)

地域医療評価WG   近藤 博史 徳島大学医学部講師    (委員長)

(オブザーバー)

上林 匡   四国経済産業局総務企画部長

渡辺 忠   四国経済産業局産業部情報政策室長 

 

おわりに

四国4県電子カルテネットワーク連携プロジェクトの概要に関して報告した。急激に進行する少子・高齢化社会において、現在の医療の水準を維持向上していくためには、電子カルテのネットワーク化は非常に重要なプロジェクトであり、今後継続的にしかも全国的な規模で推進することが不可欠である。