1. はじめに
平成15年度厚生労働科学研究「電子カルテシステムが医療及び医療機関に与える効果及び影響について」(主任研究員 阿曽沼元博)
の一環として、電子カルテ導入病院に対しアンケートを実施し、導入後の影響に関する調査を行ったので、その結果を報告する。
2. 調査方法について
アンケート調査は平成15年(2003年)12月に実施した。
学会発表、学会誌、雑誌などで電子カルテを導入していると標榜している350医療機関を対象に調査票を送付し、60医療機関から回答を受け取った。調査内容は導入しているシステムの機能から導入後の経営指標の変化まで多岐にわたる質問項目が含まれている。
また、電子カルテの導入および維持にかかるコストについては、より正確なデータを集めるため、平成17年(2005年)1月に追調査を実施した。一日あたり入院、外来患者数、カルテの導入経費、維持費などに関する調査票を43の医療機関に送付し、29医療機関から回答を受け取った。
3. 電子カルテの導入・影響
多くの病院が「電子カルテ導入の目的」として挙げている、以下の3つの観点からデータの分析を行った。
(1) 医療の効率向上
多くの病院で、診療単価の上昇、在院日数の短縮、連携医療機関数の増加が認められた。また、時間あたりの診察できる患者数は、導入からの時間の経過と共に増加している。
(2) 患者サービスの向上
患者との対話時間は減っているものの、カルテから得られる情報量の増加、チーム医療の充実などが認められた。
(3) 安全性の確保
医療者の実感としては電子カルテが安全性の確保に貢献しているという結果が得られた。
4. 電子カルテのコスト
システムのレベルアップサイクルを5年と考え、5年間の収入、患者規模総数(外来は入院の1/3とした)、電子カルテのコスト(導入費と維持費からなる)を概算した。その結果を用いて、電子カルテの経費が医業収入に占める割合を算出したところ、導入経費として基幹システムの費用のみを考えた場合は平均1.6%、部門システムまで含めた導入経費を用いた場合は平均2.3%となった。
また、電子カルテ経費を5年間の患者規模総数で除した患者一人あたり負担金額を算出したところ、導入経費に基幹システムのみを含める場合は604円、部門システムも含んだ導入経費を用いた場合は812円となった。