電子化された診療情報の相互運用性を目的としてこれまで様々な標準規格が提案されてきた。現在200以上もの規格があるとされており,若干の混乱を招いている。代表的な規格として,病院間の情報連携を目的としたMML,システム間連携を中心に発展してきたHL-7,長期にわたり,健康情報を記録するための概念モデルに注目したISO/CEN 13606,臨床試験に関連するCDISC,大規模な病院間連携を目的としたIHE,医療画像に関連するDICOMなどが挙げられる。これらの規格の間で,相互運用性を高めるためのハーモナイゼーションについて,これまで何度となく試みられてきたが,目立った成果は得られていなかった。
2010年頃より,HL-7とISO/CEN 13606の開発者で連携する動きが加速する。CIMI(Clinical Information Modeling Initiative)は,openEHRとHL-7を中心にCDISCやIHTSDOなどの標準化団体やそれに関わる企業からなる団体であり,2011年12月に今後のヘルスケア領域における情報モデルの基盤技術としてopenEHR ProjectのADL 1.5(Archetype Definition Language ver 1.5)とOMG(Object Managing Group)のUML(Unified Modeling Language)を使用していくという方針を発表した。いろいろな検討がなされた結果ではあるが,事実上,HL-7が譲歩する形となった。
しかしながら,ADL 1.5は今年行われるISO 13606の改訂作業にあわせて,現在はまだDraftの状態であり,更新作業中である。HL-7 CDAの構造を網羅するために参照モデルの開発も同時並行で進められている。今後どのような形で発展していくのかはまだ不明ではあるが,現状得られる情報を元に今後の医療情報の標準化について展望を試みる。